井上純弌『中国嫁日記(1)』エンターブレイン 2011/8: 天漢日乗
面白いし、井上さんと月さんのこの愉快なカップルに幸あれ、とは思うのだが、実際に中国人との国際結婚カップルのあれこれを見てきた立場からいうと、このお二人の現在の幸せは奇蹟だと感じる。それと同時に、著書の井上さんが危惧するようにこの「現代のお伽噺」のような微笑ましい話が、経済格差のある中国人女性と日本人男性の国際結婚推進に「悪用」されないよう祈りたい。先日、twitterで、井上さんが自称フェミニストに身に覚えのない、酷い攻撃をされてたのだが、なぜそういう身も蓋もないことが起こるかは簡単で月さんが「母語ではない日本語」で夫に「歩み寄っている」からなのだ。井上さんの中国語は、どうもあまり大したことがないそうで、猶且、月さんが日本語能力検定二級に合格した程度の日本語能力というと日本語のコミュニケーション能力として限界があることになる。実際月さんが、日本語で怒りを表現できないというネタが出てくる。いまは幸せだからイイ。でも人生には、いろんな局面がある。その時絶望的な語学的障壁がどういうことをもたらすかは、さまざまな例が示している。異言語間カップルでは、同程度に歩み寄れる言語が存在するか否かが、関係を維持するための鍵だけど、このカップルにはそれがない。月さんのおかしな日本語が、ネタになっているのは、本人は自覚してないとは言え、日本語中華主義(日本語を「日本人らしく話せる」人間だけが「まともな人間」扱いされる状況)の反映と見えなくもないのだ。月さんだけに母語と異なる言語習得を強いているように見えるのが、残念だ。心配が杞憂となることを祈る。
2011-08-13 の記事ですが、井上氏はどれだけ月さん側に歩み寄ってますか?